読書

【感想】『MEMORY』本多孝好 (著)

なんか無性に感動する小説を読みたくて、GOOGLEで検索してたら表紙がとても綺麗でいいなと思ったので、購入。

※以下読んで思ったことを書き連ねていくので、未読の方はネタバレ注意。

○ACT.1 言えない言葉 〜 the words in a capsule

 「男なんて基本、アホだから」

  本多孝好『MEMORY』集英社文庫 p.61

・いやほんともう男だから分かるし、男だからこそ分からないんだけど男ってアホなんだよな。

・好きな人が自分の好意に気付かずに見当外れな感情を当てはめてきたときのやりきれなさったら無いよな……。

・最後になるまで「ボク」が女の子だと気付かなかった。いつも思うが我ながら小説を読む能力が欠けてる気がする。

○ACT.2 君といた 〜 stand by you

 何もしてくれなくても、何もしてやれなくても、それでもたぶん涙を流した人はそのとき誰かが隣にいたことで、何もできなかった人は涙を流した人の隣にいたことで、いつかその情景を許せるようになる。

  本多孝好『MEMORY』集英社文庫 p.101

・登場人物が全員優しい。表面上の優しさじゃなくて人のことを本当に思った上での行動ができる人ばっかりで穏やかな気持ちで読んでた。こんな人間になりたい……。

・ただそこに居合わせただけ、その事実だけでも救われることってあるんだろうな。

・再開したウズラーとドロポンがお互いにその名前で呼び合うのがいい。あとお互いにそれぞれ体型と友達いないところをからかう合うのもいい。

○ACT.3  サークル 〜 a circle

 「その人の隣にしか自分の居場所はない。わかっているのに、その人のそばにいたくない」

  本多孝好『MEMORY』集英社文庫 p.161

・優しさが人を苦しめることがある。人ごとじゃない……。

・同じ物事でも人によって感じていることが全然違うことがある。たとえ自分が悪意で行ったことでも人から見たら悪意など微塵もないかの如く映ることがある。思考ロックして自分が思ってるこそ全てという自分には少々耳が痛いお話だった。

○ACT.4  風の名残 〜 a ghost writer

 「両親は自分のことを愛してなかったって、いまだにそう思いたがっていることがある。その感情が、悲しみから逃れるために必要なものだったとしても、きっと自分はいつか、そう思った自分を許せなくなるだろうって」

  本多孝好『MEMORY』集英社文庫 p.206

・マークがひたすらいいやつ……。

・というか幽霊のトム視点だとはおもわなんだ。

○ACT.5 時をつなぐ 〜 memory

 あのとき、退院していく二人を見なければ、私はイズミちゃんのもとを訪ねなかった。そこからつながっているのか。だとするならこの場は、ずいぶん昔からつながっていることになる

  本多孝好『MEMORY』集英社文庫 p.256

・森野と神田の二人の物語も人に影響を与えてたのかあ。ていうか二人の直接的な恋愛の描写をほとんど描かずとも、二人が幸せなことが分かる。これって凄い。

・別々の5つのお話で2人の恋愛模様を描いていくスタイルに脱帽。

・そういや自分もあのときGOOGLEで検索してこの本の表紙を見なければ、今この文章を書いていることもないのかとふと思った。偶然に感謝だなあ。

・人の心情を描くのがとても上手な作家さんだなと思った。この人の作品は必ずまた読もうと思う。とても優しい気持ちになれる良い作品だった。

以上。